スターリングの公式(Stirling’s formula)

初めに

本記事では、スターリングの公式を示す。ド・モアブル-ラプラスの定理(二項分布がサンプル数が十分大きいとき正規分布に近似できる)の証明に使われる公式です。

スターリングの公式(Stirling’s formula)

n!2πn(ne)n
ここで f(n)g(n)f(n)g(n) が漸近的に等しいこと、すなわち limnf(x)g(x)=1 を表す。

証明

証明には次の2つを使用します。

  • ウォリスの公式
  • 下に有界な単調減少数列は収束する

ウォリスの公式

n=1(2n)2(2n  1)(2n+1)=π2

証明など詳細は下の記事をご覧ください。

下に有界な単調減少数列は収束する

{an} を広義単調減少、かつ下に有界な実数の数列とする。このとき、数列 {an} は収束する。

証明など詳細は下の記事をご覧ください。上に有界な単調増加列は収束することと合わせて証明しています。

https://ds-path.com/math/university-math/convergence_of_monotone_bounded_sequences/(
新しいタブで開く)

証明

limnn!en2πnnn=1 を示せばよい。

収束することの証明

まず、an=n!en2πnnnn で収束することを示す。

任意の自然数 n において、an>0 であるので下に有界であることは明らか。また、
loganan+1=logn!en(n+1)n+1n+1nnn(n+1)!en+1=logn+1(n+1)e(1+1n)n+12=(n+12)log(1+1n)  1
これを n で微分すると
ddn(loganan+1)=log(1+1n)+(n+12)1n21+1n=log(1+1n)  n+12n2d2dn2(loganan+1)=1n21+1n  n(n+1)  (n+12)(2n+1)n2(n+1)2=12n2(n+1)2
となる。n1 において、d2dn2(loganan+1)>0 より n1ddn(loganan+1) は単調増加である。また、limnddn(loganan+1)=0 である。したがって、n1 において ddn(loganan+1)<0であり、loganan+1 は単調減少である。また、

limnloganan+1=limn((n+12)log(1+1n)1)=limn(log(1+1n)n+12log(1+1n)  1)=1+0  1=0
より loganan+1>0 となる。よって、{an} は単調減少である。以上より数列 {an} は広義単調減少、かつ下に有界な数列であるため、収束する。

収束先が正の数であることの証明

次に limnn!en2πnnn=A としたとき、A>0 であることを示す。

まず、n1 で次の不等式が成り立つことを示す。
loganan+1=(n+12)log(1+1n)  1<14n(n+1)
これを示すには、
h(n):=14n(n+1)  ((n+12)log(1+1n)  1)>0
を示せばよい。

g(n)=14n(n+1) とおくと
dgdn(n)=142n+1n2(n+1)2d2gdn2(n)=142n2(n+1)2  (2n+1)(4n3+6n2+2n)n4(n+1)4=146n3+12n2+8n+2n3(n+1)4=14(n+1)(6n2+6n+2)n3(n+1)4=146n2+6n+2n3(n+1)3

となる。よって、
d2hdn2(n)=d2gdn2(n)  d2dn2(loganan+1)=146n2+6n+2n3(n+1)3  12n2(n+1)2=2n2+2n+12n3(n+1)3=2(n+12)2+122n3(n+1)3>0
であり、dhdn(n) は単調増加である。また、
limndhdn(n)=limn(dgdn(n)  ddn(loganan+1))=limn(142n+1n2(n+1)2  log(1+1n)  n+12n2)=0
よりdhdn(n)<0 であるため、h(x) は単調減少である。上記より limnloganan+1=0 であったことに注意すると
limnh(n)=limn(14n(n+1)loganan+1)=0  0=0
となる。よって、h(n)>0 が成り立ち、
(n+12)log(1+1n)  1<14n(n+1)
が示せた。

いま、
loganan+1<14n(n+1)=14(1n  1n+1)
より
loga1an=log(a1a2a2a3an1an)=i=1n1logaiai+1<i=1n114(1i  1i+1)=14((1  12)+(12  13)++(1n  1  1n))=14(1  1n)<14
となる。a1=e2π より
loga1an<14loga1logan<14loge2π  logan<14logan>34+log12πlogan>loge342πan>e342π
である。したがって、任意の自然数 n において、an>0 がいえた。

収束先が1であることの証明

ウォリスの公式

n=1(2n)2(2n  1)(2n+1)=π2

を用いて示す。

ウォリスの公式の左辺を変形する。
n=1(2n)2(2n  1)(2n+1)=221×3423×5=limn{(2n)!!}2(2n1)!!(2n+1)!!
となる。

1(2n1)!!=1135(2n  1)=2462n(2n)!=2nn!(2n)!1(2n+1)!!=1135(2n+1)=2462n(2n)!(2n+1)=2nn!(2n)!(2n+1)
より
n=1(2n)2(2n  1)(2n+1)=limn{(2n)!!}2(2nn!)2){(2n)!}2(2n+1)=limn24n(n!)4){(2n)!}2(2n+1)=limn24n2n+1(n!en2πnnn)4((2n)2n2π2n(2n)!e2n)2πn24n

と式変形できる。よって、
A4A2limnπn2n+1=π2
より πA22=π2 となる。A>0 より A=1 が示せる。

タイトルとURLをコピーしました